漫画「秒速5センチメートル」を読んだところ、映画、小説とはかなり違う。
もちろん大筋は同じだけど、ストーリー補足と漫画家(清家雪子さん)の妄想が追加されている。
かなり突っ込んで「そこが知りたかった!」というところを描いてくれてるので、読んだ後に満足感が大きい。
以下、1つずつ説明する。
がんばってぼかしつつも一部ネタバレを含む。
ストーリー補足
映画、小説にもなかったストーリー補足があったのがよかった。
第一部桜花抄の貴樹と明里が仲良くなるまでの経緯が詳細に描かれている。
映画では図書館のシーンと帰り道ぐらいだったけど、漫画ではクラブ活動や貴樹がぜんそくで苦しむ様子などもある。
また会話内容も具体的で、2人が強い結びつきなのがより分かる。
第二部コスモナウトでは、貴樹と花苗が中学校で知り合って高校で仲良くなるまでが丁寧に描かれている。
高校の文化祭で一緒に出し物をすることになったのがきっかけで、話すようになったというのは漫画にしか出てこない。
また、頭が良くて美人の佐々木さん本人が出てきて貴樹について話すシーンまである。
佐々木さんの言うことは大人びていて、高校生なのにすごいと感心。
第三部秒速5センチメートルでは、何と言っても貴樹と水野さんの出会いから別れまでバッチリ描かれている。
水野さんは映画ではすごく地味でさえない女性だったが、漫画ではメガネが余計セクシーに見えてしまう美人である。
地味な女性という設定だけど、美人なんだもん!絵が。
内容的に「すごく突っ込んだな〜」という感想。
水野さんは、映画では誰かわからないような短いシーンで登場。
小説ではもっと説明があるけど割とさらっとした描かれ方。
でも漫画ではけっこうなボリュームで、出会いから別れまで詳細に描かれている。
そして、ラスト貴樹と明里が踏切ですれ違うシーン。
漫画では明らかにハッピーエンドと分かるような演出になっている。
分かり易すぎて、「これ必要だったの?」と個人的には思ってしまう。
あの微妙なところがよかったんじゃないの?
でも読んだ人に安心感はあるのだろう。
漫画家さんの妄想
ストーリー補足とは別に、漫画家さんの妄想が爆走していると感じたところが2つあった。
1つめ。
漫画家さんの水野さんへの思い入れはただ事ではない!
分かる、私も水野さんが一番気になる存在だから。
映画と小説の水野さんのキャラは一致している。
でも漫画ではちょっと違う。もっと積極的でちょっと執念深い。人間っぽい。
疎遠になってきた貴樹を、会社の前で待ち伏せしてしまうのだ。
映画と小説の水野さんは待ち伏せとかしなそう。
貴樹のひどい男っぷりが光るのも漫画ならでは。
親に会ってほしいという水野さんへの対応を見ても、今すぐ別れろ案件。
水野さんを岩舟になぜか連れて行くんだけど、岩舟駅での仕打ちはホラーかと思うぐらい怖い。
水野さんがかわいそうすぎて泣けた。
映画と小説ではメールで水野さんが貴樹に別れを告げるんだけど、漫画だけは直接部屋で別れる。意外とドライな水野さんで安心した。ま〜、あんな仕打ち受けたらね。
水野さんには、今後貴樹と一生無縁で幸せな人生を送ってほしいな。
2つめ。
漫画には最後になんと、「花苗のその後」のショートストーリーが付いている。
ここも漫画家さんの希望的妄想だと感じたところ。
すっかり大人になった花苗だけど、恋にイマイチ踏み出せない。
そこで花苗がとる行動とは・・・。
それやっちゃう?(笑)という内容。
漫画家さんはどうしても花苗に幸せになってほしかったんだな〜、という最後。
まとめ
映画、小説のストーリー補足をしてくれると同時に、
漫画だけちょっとストーリーが変わっちゃってない?と思うところがある。
映画と小説は新海誠監督が描いたものだから同じだけど、漫画は別の方が描いているからだ。
でも漫画ならではの話の膨らませ方がよかった。
原作とは違う人が描いたからこそ、もうちょっと知りたかったところまで突っ込むことができたのだろう。
背景もすごく丁寧に描かれていて、漫画のロケ地ツアーに行きたくなるぐらい、映画にはなかった参宮橋周辺の場所が出てくる。
全部制覇するなら
映画ー>小説ー>漫画
の順番がオススメ。
映画で世界観を感じて、小説でストーリーを理解して、漫画で妄想する。
漫画もぜひ読んでほしい。
全2冊。